3学期始業式 式辞

校長 澤山 陽一

 皆さん、いよいよ3学期のスタートです。3年生は卒業に向けて、1,2年生は進級に向けてのまとめの学期となります。あっという間に時間は過ぎていくものです。ぜひ1日1日を心を込めて過ごしてください。
 さて、ほんの1週間前に始まったばかりの新しい年・2019年は、日本にとっては、2020年の東京オリンピックに向けての大切な準備の年といえるでしょう。各競技の選手はオリンピック出場に向けて準備に余念がないでしょうし、運営に携わるスタッフや警備をする警察、選手村など宿泊施設の皆さんも、それぞれがそれぞれのベストを尽くすため、本番当日までピリピリとしたタイトな日々を送ることになります。
 この4年に1度の地球規模のスポーツの祭典オリンピックですが、われわれの母校大洲農業高校にも、このオリンピックにまつわる感動的な物語があることを生徒の皆さんは知っているでしょうか。実は、本校の卒業生である井上治さんという方は、皆さんが生まれる50年くらい前の1952年に、ヘルシンキで開催されたオリンピックに5000mの選手として出場されているのです。この井上先輩は、本校在学中に全国高校陸上大会500mにおいて優勝し、その2年後にオリンピック出場を決めたのです。井上先輩は、本校創立60周年記念誌の中で、大洲農業高校で体育教員の正月弘明先生に熱心にご指導いただいたからこそ、卒業後オリンピックに出場できたのだと、正月先生に対する尊敬と感謝の気持ちを熱く綴られています。この正月先生ですが、ご自身が体操競技の国体選手として活躍される傍ら、大農においても部活動の指導に力を入れられていたため、当時、大農は陸上と体操競技の分野では愛媛県でもトップレベルだったようです。しかし、あろうことか、正月先生は国体出場に向けた練習中にケガをされ、若くして命を落とされてしまったのです。
 みなさん、ステージの左側を見てください。この胸像は、今お話しした正月先生のものです。この正月先生の像は、前回の東京オリンピックが開催された1964年に作られたものです。このオリンピックでは、宇和島市出身の山下治広選手が自分自身が編み出した跳馬の新技である「新山下跳び」で、見事金メダルを獲得したのですが、その山下選手は、愛媛県体操界の中心的な指導者であった正月先生に敬意を表して、本校の体育館を訪れ、正月先生のこの像に金メダルをかけ、優勝を報告されたということです。本当に素晴らしい話だと思いませんか。
 私は、本校の校長として、この正月先生の像の前で、以下のことを改めて誓いたいと思います。「大農の教職員は、先生のように厳しくても常に生徒の成長を見守る温かい気持ちを持つよう努力します。生徒たちは教職員に常に感謝の気持ちを持ち、自分の夢に向かって日々努力します。」
 正月先生は、このステージの上から今日も皆さんを見守ってくださっています。そして、先生の熱い思いは、この像とともに本校に脈々と受け継がれていくべきものです。皆さんどうか、その心に先生の思いを深く刻み込んでください。
 最後になりましたが、3学期も私がいつも言っているように1,2学期に引き続き自分の命はしっかり自分で守ること、常に「笑顔と感謝」の気持ちを持ち、人の話にしっかり耳を傾け生活することをお願いします。この新しい年が、皆さん一人ひとりにとっても大農にとっても本当にすばらしい年になることを祈念します。以上です。