入学式式辞
校長 澤山 陽一
冨士嶺の木々の緑が陽の光を受けて輝き、校庭の春の花々は匂うがごとく咲き誇っています。まさに春爛漫の今日の佳き日に、多数の御来賓の皆様、保護者の皆様の御臨席を賜り、平成30年度 愛媛県立大洲農業高等学校の入学式をこのように盛大に挙行できますことは、生徒並びに教職員一同の大きな喜びであり、心より厚くお礼を申し上げます。
ただ今、入学を許可しました生産科学科25名、食品デザイン科39名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。
今、この時この場所で皆さんと出会い、同じ空間にいることを、私は校長として本当にうれしく思っています。そして、皆さんとともに過ごす三年間が楽しく充実した日々であることを願ってやみません。
今日から、皆さんの高校生としての新生活がスタートするのですが、今、皆さんには何か目標がありますか。「どこに出しても恥ずかしくない人間になれ、国家社会の役立つ人間になれ」というのが、本校の校訓です。もし、私がここで、校訓どおり「国家社会の役に立つ人間になるのが皆さんの目標です。」と言ったとしたら、自分にはハードルが高くて無理だと感じる人が多いと思います。
確かに「目標」とか「国家の役に立つ」とかいうと堅苦しく感じるかも知れません。でも、これは、分かりやすく言えば、皆さんが「周りの人を喜ばせることのできる自分の得意技を探す」ということです。
皆さんと同世代の藤井聡太さんは、将棋という得意技を見つけプロ棋士として大活躍していますが、彼はやはり天才であって我々の参考にはならないでしょう。
では、誰を参考に高校生活を過ごせばいいのでしょうか。私は先日新聞で、ある高校生の記事を見つけました。それは、小学生の時は教室にすら入れず、保健室登校を続けていたのに、15歳の時にはIT関連の会社を設立するという離れ業をやってのけた山内奏人さんという高校三年生でした。彼は、生活のほとんどをスマートフォンに依存している日本人が、お金に関してだけは財布を持ち歩き、現金決済をしていることに疑問を持ち、クレジットカードを作らなくても、スマートフォン一台で誰でもすぐにカード決済ができる「ワン ペイ」というアプリを開発しました。彼は、高校の授業が終わると、毎日、六本木の自分のオフィスで、大人の社員三人と夜中まで仕事をし、今では業界で名の知られた存在となっているそうです。
彼は、学校があまり好きではなかったし、自分のことを落ちこぼれだとも思っていましたが、それを乗り越えられた大きな理由は、他はだめでも「プログラミングだけは自信が持てたこと」だと言っています。
私は、皆さんには、社会において、他人には真似できない自分独自の光を放つ人間になってほしいと思っています。そのために皆さんには、この三年間で誰にも負けない何かを見つけ、自分に自信を持ってほしいと願っています。農業の専門高校である本校の学習においては、これまで皆さんが学習したことのない専門的な内容がたくさんあります。中学までに学んできたこととは全く別の学習を、全員用意ドンで始めるのだと思ってください。皆さんの努力次第で、周りを驚かせるような得意技を身に付けることが、今からでも十分可能なのです。また、地域と連携したボランティア活動や研究活動などでも、きっと自分に自信が持てる何かが見つけられるはずです。
私が今まで指導してきた生徒の中には、入学当初は成績が最下位でしたが、専門教科である食品製造に興味を持ち、地域特産品を使った商品開発の研究等に没頭した結果、大学を卒業し、現在は農業高校で教員をしている人もいます。皆さんという存在は、これからどんな自分にでもなれる夢の卵なのだということを忘れないでいてほしいと思います。
最後になりましたが、保護者の皆様、本日はおめでとうございます。
お子様は、これから高校生活を通じて自立の道を歩むことになりますが、大洲農業高校を卒業する時には、故郷に貢献できる健康な体と健全な精神を身に付け、自信にあふれ光り輝くたくましい若者となれるよう、私たち教職員は心を込めてお子様と向き合っていきたいと思っております。
ここに改めて、本校の教育活動に対する御理解と御支援を賜りますようお願い申し上げ、式辞といたします。